Story1

配管設計をどれだけ
詳細につめるかで
現場工事がスムーズになる
プラントの全景を描く
配管設計の面白さ

顧客の要望をうかがい
バランスがとれた着地点をさぐる

2004年に新卒で東洋エンジニアリングに入社し、2019年にテックプロジェクトサービスに移籍。プロジェクトは2016年から2年間、親会社に籍をおきながら進めた。プロジェクトの内容は、4階建の原薬設備工場の設計から施工までを行うというもの。基本設計が終わり、詳細設計からプロジェクトに参加する。それまでは石油化学プラントに携わることが多かったが、初めて大型の新設原薬工場建設に携わることになる。
基本設計の段階で顧客と協議を重ねて設備仕様を定義しているが、設計を進める過程で顧客の要求事項がより具体化し、場合によってはそれが仕様変更につながり、コスト及びスケジュールの影響を考慮しなくてはいけない事も出てくる。設計上流のP&ID(配管計装図)の変更が出ると、配管を含む他の設備仕様の変更、配管自体の物量の増加により医薬工場特有の建屋内の限られたスペースにものをおさめる事が難しくなる事がある。予算はもちろん、建築確認申請スケジュールが決められており建屋の階高を変更するなどの対応を取る事はできない状況下で、顧客が何を望んでいるのかをうかがいながら、予算や工事のバランスがとれる着地点をさぐらなければいけない。知恵を絞り代替案を提示するのは、大変だが楽しさもある。

原薬工場という限られたスペース
空間設計の創意工夫が試される

設計は、プロセス設計、機器設計、配管設計、建設設計と流れる。顧客の要望が変わると、下流側の設計内容がすべて変更になってしまうので、特に重要なのは上流の各設計担当者たちと密にコミュニケーションを取ることだ。例えば、P&IDに対して配管設計の視点でチェックして「過去こういう要求があった」と情報共有をすることで、社内で事前に検討することができる。このような連携が、納期通りに顧客の要望を叶えていく上で必須だ。「こうできると思っていた」という認識の違いがあると、思わぬ感情のもつれが生じてしまう。後工程にインパクトがあることは、必ずプロジェクトの初期の段階で顧客と合意形成をするようにした。
原薬工場ならではの難しさもあった。原薬工場は屋根・壁・天井のある建物の中に機器や配管を入れなくてはいけない。建築確認申請等が必要なので、建物を大きくするのは詳細設計が始まった段階では正直厳しい。限られたスペースに顧客の要望を叶える配置・配管をどのようにするか、空間設計の創意工夫が試される。建屋特有の制限がある中で、関係者と連携して、いかにうまくハンドリングができるかを突き詰められる仕事だ。

関係部門が3DCADを扱うことで
成果物の完成度がアップ

この案件は、3D設計の手法がそれまでと違っていた。いままでは配管設計がすべての空間設計や機器配置を3DCADで設計していたが、このプロジェクトから各設計部門が3DCADを使用し、その3Dデータを統合する手法を導入。初めての手法だったので、部門間でコミュニケーションをとりながら、手探りの中設計を進めていった。
うまく連携できれば効率化に繋がるが、連携がうまくいかなければ統合した時に調整が必要になり逆に時間がかかってしまう。3DCADによって顧客に完成イメージを持ってもらいやすくなり、合意形成のスピードが各段に上がった。これがプロジェクトの成功要因ともなった。
各部門で3DCADを使うまで、配管設計が空調のダクトのサイズや電気/計装のケーブルダクトのルート及びサイズの情報を入手して、配置を決めていた。今回もいきなり、各部門が3DCADで設計をするのではなく、各部門の物量や機器の配置を確認したうえで、どのようなスペースが必要かを事前に細かく調整してから3D設計へ移行したため、統合モデルにおいて致命的な干渉は避ける事ができた。
3DCADによる設計が完了し、図面を発行するも、いざ施工がスタートすると、3DCADの通りに機器や配管が設置できないことが発生した。例えば、柱と梁をつなぐ接合部が3DCADに入っていないため、配管工事業者から図面通りの位置は配管サポートを取り付ける事ができない不具合の指摘があった。3DCADには記載されていない細かな部分で、不具合が起きる。1000枚以上の図面をその都度チェックして、連携を取りながら修正をかけた。

社内初の手法によるプロジェクト
今回のノウハウが次にいきる

配管設計において、アイソメ図(立体を視覚的にわかりやすく表現した図面)の発行が完了すると安心する。しかし、実際に工事がスタートすると、現場で機器を据えつけることができず「図面がおかしい」と問い合わせがあり、その度にヒヤっとする。工事が終わり、スケジュール通りプラントが稼働していると聞いた時に、やっと満足感が得られる。
今回の原薬工場では、配管設計の責任者として、完成後に顧客と一緒に操作性の確認をすることができた。図面に不具合があると、工事現場に迷惑がかかる。無事に工期通りに終えることができた安心感と、現場の方への感謝の気持ちが溢れた。
3DCADを使った社内初の取り組みは、大規模・新設案件の良き事例となり、その後の3DCADも同様の設計手法が取られている。これまでは配管設計が3DCADを使っていたが関係全部門が3DCADに関わることで、チェックの目が増えて設計の効率化や成果物の精度向上につながることがわかった。今回のプロジェクトは、どのように3DCADで設計を行えば、効率的に進められるかを考えるきっかけになった。それは、次のプロジェクトや社内ノウハウとしていきている。

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