1．概要

　医薬品の国内市場規模は2015年現在11.5兆円で、2030年までに25.7兆円の市場に成長すると予測され ています。国内外を問わず、これら医薬品に使用されている高機能化学品の多くはバッチ式製造法※１によ り製造されていますが、生産に伴って発生する廃棄物量やCO2量の削減、必要なモノを必要な時に必要な 量だけ造る「オンデマンド生産」への適応が課題となっています。
　このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）は、2018年度 から「戦略的省エネルギー技術革新プログラム／テーマ設定型事業者連携スキーム」に取り組んでおり、 その技術開発テーマの一つとして「再構成可能なモジュール型単位操作の相互接続に基づいた医薬品製 造用iFactoryの開発※2」により、医薬品製造のためのオンデマンド生産による効率化と、それに伴うCO2排 出量の大幅な削減を目指しています。
　株式会社高砂ケミカル、田辺三菱製薬株式会社、コニカミノルタケミカル株式会社、横河ソリューションサ ービス株式会社、テックプロジェクトサービス株式会社、大成建設株式会社、株式会社 島津製作所、三菱 化工機株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所（産総研）は、現在のバッチ式製造法に替わり、 連続合成法※3、バッチ連続型を組み合わせたバッチ連続生産方式を採用したモジュール型の医薬品製造 設備「iFactory®」（アイファクトリー）の開発を行っています。
　これまでの検証から、バッチ連続型プロセスで実際に製造した医薬・ファインケミカル関連の3品目で洗 浄・濃縮・晶析・ろ過が、10kg／1時間の生産速度で、8時間連続稼働できることを確認しました。 また、生産工程の一つである「ろ過」を連続方式にすることで、一般的なバッチ方式の装置に比べ8時間 稼働で78％、連続反応器による反応工程に導入した連続方式の設備で84％のエネルギー削減に相当す る効果を実現しました。
　さらに連続化により洗浄溶剤の使用量や切替洗浄の回数を大幅に軽減できることにより、従来のバッチ 方式で製造した医薬・ファインケミカルズ関連の3品目で30％～40％の廃棄物削減効果が見込める結果と なりました。
　生産の効率化という観点では、工程の組み換えを容易にするモジュール構造、制御システム、電気系統 や、モジュール間をつなぐ配管の共通化によって接続性の向上と設備更新時のコスト低減が図られていま す。各生産工程の品質を担保する分析作業においては、これまで薬液を採取して分析室で人の手によっ て品質確認をしていた工程が、防爆形の自動サンプル採取を備えた自動分析装置の開発・導入によって 省人化されています。
　今後は、「iFactory®」の普及により、利用者の要求に応じてその都度、多品種少量生産の医薬品製造で 省エネルギー化と生産や資源の効率化を目指します。

2．各社の役割と今回の成果

（1）各社の役割

3．今後の予定

　本事業で「iFactory®」プロトタイプの製作と実用化を進めるとともに、普及にあたっては試作のモジュール、 分析装置、制御システムなどを産総研つくば中央第5事業所に展示、企業関係者を中心に希望者向けの 公開を行っていく予定です。また、普及を目的に2019年4月に設立した特定目的会社「株式会社iFactory」 は開発した生産設備の市場で「iFactory®」の普及を推進していきます。

4．問い合わせ先