News Release
2023.12.14
株式会社高砂ケミカル
田辺三菱製薬株式会社
コニカミノルタケミカル株式会社
横河ソリューションサービス株式会社
テックプロジェクトサービス株式会社
大成建設株式会社
株式会社 島津製作所
三菱化工機株式会社
国立研究開発法人産業技術総合研究所
連続生産方式による医薬品製造設備の構築、実証試験に成功
―医薬品のオンデマンド生産に向け、大きな一歩を踏み出す―
NEDOが助成する「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」(以下、本事業)の一環で、株式会社高砂ケミカル、田辺三菱製薬株式会社、コニカミノルタケミカル株式会社、横河ソリューションサービス株式会社、テックプロジェクトサービス株式会社、大成建設株式会社、株式会社 島津製作所、三菱化工機株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は今回、連続生産方式を採用した再構成可能なモジュール型医薬品製造設備「iFactory®」を開発し、高砂ケミカル掛川工場に実証プラントを構築、実証試験に成功しました。
実証試験では、8時間以上の全自動連続生産を実現するとともに、得られた化合物は規格に適合し、バッチ生産と同等の品質が確保されていることを確認しました。また、バッチ生産に比べ8割以上のエネルギーと6割以上の廃棄物排出量の削減効果が見込めることが明らかになり、医薬品のオンデマンド生産に向けて、大きな一歩を踏み出しました。
図1 高砂ケミカル掛川工場に構築された実証プラント
1.背景
日本の二酸化炭素(CO2)排出量を部門別に見ると、産業部門が全体の35.1%と最も多く、2021年度は3億7300万トン(電気・熱分配後排出量)のCO2を排出しています。2050年カーボンニュートラルの実現に向けては脱炭素イノベーションが不可欠な状況にあり、経済産業省 資源エネルギー庁とNEDOは「省エネルギー技術戦略」に定める重要技術として「製造プロセス省エネ化技術」をあげ、産業部門の各分野で省エネルギープロセスの開発が積極的に行われています。
このような背景の下、医薬品原薬・中間体をはじめとする機能性化学品製造分野でも持続可能な産業構造への変革に向けて、産学官連携による積極的な取り組みが行われています。その一つとして、長らく主流であったバッチ生産※1方式から脱却し、連続生産※2を導入する試みが広がっています。連続生産では運転時間の調整により製造量を変更できるため、必要なモノを必要な時に必要な量だけ生産するオンデマンド生産ができ、設備がコンパクトで、廃棄物排出量の削減などの利点があります。
NEDOは、エネルギー消費を抑えつつ廃棄物排出量の削減が見込めるオンデマンド型連続生産プロセスを実現するため、本事業※3で、2018年7月から再構成可能なモジュール型単位操作の相互接続に基づいた医薬品製造設備「iFactory®」の開発に着手し、先のリリース※4にあるように、2021年6月には、「iFactory®」生産方式が従来の主要な方式に比べ約8割のエネルギー削減効果、3割から4割の廃棄物の排出量削減効果があることを確認しました。今回、日本の医薬品製造における省エネルギー化・生産と資源の効率化に貢献する生産設備の構築と実用化を目指して、高砂ケミカル掛川工場にて実証プラントの構築を進め、2023年7月まで実証試験を実施し、5年間の本事業を完了しました。
2.今回の成果
今回、高砂ケミカル、田辺三菱製薬、コニカミノルタケミカル、横河ソリューションサービス、テックプロジェクトサービス、大成建設、島津製作所、三菱化工機および産総研は、連続生産方式を採用したモジュール型の医薬品製造設備「iFactory®」の開発を行い、高砂ケミカル掛川工場に構築した1時間あたり10kgの生産能力を持つ実証プラントで、固体取り扱いを含む製造プロセスの連続生産を世界に先駆けて実現しました。この連続生産で得られた3種の化合物はいずれも規格に適合しており、バッチ生産と同等の品質を確保しながら、バッチ生産に比べてエネルギー、廃棄物排出量の大幅な削減効果を実証しました。
2022年11月、医薬品規制調和国際会議(ICH)で原薬および製剤の連続生産に関するガイドライン(ICH Q13)が採択され、連続生産設備の導入検討が本格化していく中、本事業により得られた成果は連続生産設備の普及に向けた大きな一歩となります。
加えて、製造プロセスの再構成が可能な点も「iFactory®」の大きな利点です。多品種変量生産が要求されるなか、プロセスを容易に変更でき、それが短時間で実施できるメリットは非常に大きく、その実現のために単位操作機能をモジュール化しています。「iCube」は重量5トン未満で設計されており、フォークリフトやクレーンを用いて自由に組み換え・再構成が可能です。また、プロセスの再構成に対応したソフトウェア「オーケストレーションシステム」は再プログラミングを行うことなくプロセスの再構成が可能となっています。この柔軟性により、「iFactory®」はさまざまなプロセスに容易に適用することが可能となり、将来的には平時とパンデミックなどの緊急時で品目を速やかに切り替えるデュアルユースや、他の工場に装置を移動して生産を行う技術移転なども速やかに行うことが可能です。
図2 高砂ケミカル掛川工場に構築された実証プラント
図3 実証試験を実施した七つの単位操作
3.今後の展開
医薬品に代表される日常生活に不可欠な機能性化学品の生産を未来世代にわたり継続するには、温暖化、人口減少など喫緊の社会課題に対処可能な生産システムへの変革、それを扱うパイロット(技術者)の育成が急務です。
本事業において「iFactory®」の普及を目的に設立された株式会社iFactory※5では、「iFactory®」の商用化に向けた開発を進め、遠隔地からの完全リモートによる無人運転、製剤工程との連結といった機能追加を目指すほか、今後も社会課題の解としての在り方を追求します。加えて、産総研つくばセンターで開催する実験機を使用したトレーニングプログラムを通して、連続生産を実践的に理解した技術者を育成します。これらシステム開発と技術者育成の両輪により、バッチ生産から連続生産へのグレートリセットを推進していきます。
NEDOは引き続き、経済成長と両立する持続可能な省エネルギーの実現を目指し、「省エネルギー技術戦略」で掲げる産業・民生(家庭・業務)・運輸部門などにおける重要技術を中心に、2030年に高い省エネ効果が見込まれる技術の開発について、事業化までシームレスに支援します。
操作の相互接続に基づいた医薬品製造用iFactory™の開発
事業期間:2018年度~2023年7月
事業予算:15.5億円(NEDO負担額10.6億円)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101441.html
出資メンバー:齊藤隆夫(高砂ケミカル会長)、株式会社インディージャパン、横河ソリューションサービス、テックプロジェクトサービス、大成建設、三菱化工機、住商ファーマインターナショナル株式会社、東京産業株式会社
所在地:東京都大田区
発起人:齊藤隆夫
4.問い合わせ先
高砂ケミカル 担当:齊藤 TEL:03-5703-3831
田辺三菱製薬 大阪コーポレートコミュニケーション部 担当:野村 TEL:06-6205-5119
コニカミノルタケミカル 営業技術部付 兼 営業技術グループ 担当:小野 TEL:0538-23-6777
横河電機 コミュニケーション統括センター 広報課 担当:橘田 TEL:0422-52-5530
テックプロジェクトサービス 経営企画室 担当:岩瀬 TEL:047-454-1178(代表)
大成建設 社長室 コミュニケーション部 広報室 TEL:03-3348-1111
島津製作所 コーポレート・コミュニケーション部 広報グループ TEL:075-823-1111
三菱化工機 企画部 担当:松本 TEL:044-333-5377
産総研 ブランディング・広報部報道室 TEL:029-862-6216
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
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